地域案内
ワシントン州のロードトリップは、距離ではなく地形を走る旅である。
ワシントン州を車で走る旅は、単なる移動ではない。 シアトルの市場を出発し、港の水を見て、フェリーに乗り、島へ渡る。 南へ走れば、レーニア山の白い峰が近づく。 西へ向かえば、オリンピック半島の雨林と流木の海岸が待っている。 北へ行けば、ベリンハムとノース・カスケードの鋭い山岳が見える。 東へ山を越えれば、雨の州という印象は一変し、乾いた光のワインカントリーが広がる。
この州のロードトリップは、点を結ぶだけでは面白くない。 どの道を通るか、どの水を渡るか、どの山を越えるか、どこで泊まるかによって、 旅の意味が変わる。 シアトルからレーニア山へ行く一日。 オリンピック半島を二泊三日で回る旅。 アナコーテスからフェリーでサンファン諸島へ渡る旅。 ウィッビー島をフェリーと橋で抜ける旅。 ノース・カスケードの二十号線を越え、ウィンスロップへ下る旅。 ワラワラへ向かい、乾いた光の中で泊まる旅。 それぞれが、同じワシントン州でありながら、まったく違う一章になる。
旅人に最初に伝えたいのは、ワシントン州を急がないことだ。 地図上では、シアトル、レーニア山、オリンピック半島、サンファン諸島、ノース・カスケード、ワラワラを一気に結びたくなる。 しかし、そうすると移動ばかりになる。 この州では、道路の長さよりも、天候、フェリー、山岳道路、駐車、宿泊地、日没、食事の場所が旅の質を決める。 余白を持った旅程こそ、ワシントン州を深く見せる。
このページでは、ワシントン州を車で読むための主要ルートをまとめる。 シアトル発の初めての旅、オリンピック半島一周、レーニア山、サンファン諸島、ウィッビー島、 ノース・カスケード、レブンワース、スポケーン、ワインカントリー。 宿、食事、観光案内所、国立公園、フェリーを含めて、実際に使える旅として構成する。
最初の一台は、シアトルで借りすぎない。
ワシントン州のロードトリップは車があると強い。 しかし、シアトル中心部だけを見る初日から車を持つ必要はない場合も多い。 パイク・プレイス・マーケット、ウォーターフロント、シアトル・センター、チフーリ・ガーデン・アンド・グラス、スペース・ニードル。 これらは徒歩、公共交通、配車サービスで組み立てられる。 中心部では駐車が負担になり、ホテルの駐車料金も高くなりやすい。
日本から到着した旅行者には、まずシアトルで一泊か二泊し、時差と都市の地形に慣れてから車を借りる方法を勧めたい。 到着初日に長距離運転を始めると、時差、右側通行、道路標識、天候、渋滞が一気に重なる。 ワシントン州の自然は美しいが、そこへ向かう道は長い。 旅の初日から無理をしないことが、全体の満足度を高める。
車を借りる日は、目的を明確にする。 レーニア山へ行くのか。 オリンピック半島へ渡るのか。 ウィッビー島から北へ抜けるのか。 ウッディンヴィルやワラワラへ向かうのか。 目的地によって、出発時間、宿泊地、持ち物、運転距離が変わる。 車は自由を与えるが、自由には準備が必要である。
水の道――フェリーを旅に入れる。
ワシントン州のロードトリップで、フェリーは単なる交通手段ではない。 車ごと船に乗る。 エンジンを切る。 甲板へ出る。 水の上から都市や島を見る。 この体験が、ワシントン州の旅を大きく変える。
フェリーを旅程に入れるなら、時刻、車両予約、チケット、到着時間、帰りの便を必ず確認したい。 ワシントン州フェリー公式では、時刻確認、オンラインチケット購入、一部航路での車両予約が案内されている。 特にアナコーテスからサンファン諸島、ポートタウンゼントからクープビルへ向かう旅では、車両予約が旅程の鍵になる。 船の時間は、島旅と半島旅の骨格である。
初めてなら、短いフェリー体験をシアトル近郊で入れるだけでもよい。 しかし本格的に島を読むなら、サンファン諸島やウィッビー島を組み込むとよい。 サンファン諸島は、フェリーで渡ることそのものが旅の儀式になる。 ウィッビー島は、行きはフェリー、帰りはディセプション・パスの橋、という組み方が美しい。 フェリーと橋の両方を使うことで、島の地形が体に入る。
山の道――レーニア山は一日でも、一泊でも違う。
シアトルまたはタコマからレーニア山へ向かう道は、ワシントン州を代表するロードトリップの一つである。 遠くに見えていた白い山へ近づく。 都市の道路から郊外へ、森へ、国立公園の入口へ、そしてパラダイスやロングマイアへ。 地図では日帰り可能に見えるが、山の旅は距離だけでは決まらない。
日帰りなら、朝早く出ることが大切である。 ニスクアリー入口から入り、ロングマイアとパラダイスを中心にする。 道路、駐車、天候、施設営業を確認する。 午後遅くまで山上部に残るより、早めに下り、アシュフォード周辺で食事を取る方が、旅として美しく終わる。
一泊できるなら、旅の質は大きく変わる。 ナショナル・パーク・イン、パラダイス・イン、アシュフォード周辺の宿。 山の朝と夕方が加わることで、レーニア山は日帰り観光地から、滞在する山へ変わる。 天候の余白も生まれる。 一日目に山が見えなくても、翌朝がある。
レーニア山では、車の燃料、水、軽食、上着、雨具、歩きやすい靴が重要である。 夏でも高地は冷える。 冬は雪道、道路閉鎖、チェーン規制、短い日照を前提にする。 山のロードトリップは、美しさと慎重さを同時に持つ旅である。
半島の道――オリンピック半島は二泊以上で考える。
オリンピック半島は、ワシントン州ロードトリップの中でも、最も時間を必要とする場所である。 ポートエンジェルス、レイク・クレセント、ホー雨林、フォークス、太平洋岸、レイク・クイノルト。 一日で全部を見ようとすると、ほとんど移動だけで終わる。 この半島は、一泊より二泊、二泊より三泊で見え方が変わる。
初めてなら、二泊三日が基本になる。 一泊目をポートエンジェルスまたはレイク・クレセントに置き、二泊目をフォークス、カラロック、またはレイク・クイノルト方面に置く。 宿を分けることで、移動距離を減らし、湖、雨林、海岸をそれぞれの時間で味わえる。
海岸へ行く日は、潮汐と天候を確認する。 流木は美しいが危険もある。 波、満潮、濡れた木、足元、霧、日没。 雨林へ行く日は、道路と駐車を確認する。 ホー雨林は人気が高く、混雑する日もある。 半島のロードトリップは、地図よりも現地条件を読む旅である。
食事は町と宿で計画する。 ポートエンジェルス、フォークス、カラロック、クイノルト。 大都市のように選択肢が多いわけではない。 水と軽食を持ち、夕食は早めに考える。 暗くなってから長い道を走り、店を探す旅は避けたい。
島の道――ウィッビー島はフェリーと橋で読む。
ウィッビー島は、シアトル近郊から比較的入りやすい島のロードトリップである。 ムキルテオからクリントンへフェリーで渡り、ラングリー、クープビル、フォート・ケイシー、エビーズ・ランディング、 オークハーバー、ディセプション・パスへ進み、北側の橋で本土へ戻る。 またはその逆に、橋から入り、フェリーで出る。 どちらも美しい。
このルートの魅力は、島を一方向に抜けられることだ。 フェリーで入る時間と、橋で出る劇的な景色。 古い港町クープビル、ラングリーの小さな町、ペン・コーブ、州立公園、海峡の橋。 サンファン諸島ほど遠くなく、それでいて水と島の旅情を十分に味わえる。
日帰りでも可能だが、一泊すると島の印象は深くなる。 ラングリーやクープビル周辺に泊まり、夕方と朝の島を歩く。 フェリーの待ち時間、食事の予約、州立公園の利用条件を確認する。 ウィッビー島は近いからこそ、急ぎすぎると良さが消える。
北の山岳道路――ノース・カスケードを越える。
ワシントン州で最も印象的な山岳ロードトリップの一つが、ノース・カスケードの二十号線である。 西側の森からニューへイラム、ディアブロ湖、ロス湖周辺を通り、峠を越えてウィンスロップ、マザマ、メソウ・バレーへ下る。 水の青、岩峰、針葉樹、そして東側の乾いた光。 この道を走ると、ワシントン州の地形が一日の中で変化する。
ただし、このルートは季節を強く受ける。 高山部は冬季閉鎖される。 開通時期、道路状況、雪、工事、山火事の煙、天候を確認する。 夏から初秋が最も走りやすいが、それでも油断はできない。 ノース・カスケードは、準備した人に深い記憶を返す道である。
初めてなら、西側からディアブロ湖までの日帰りでもよい。 山を越えるなら、ウィンスロップやマザマで一泊したい。 日帰りで往復してしまうと、移動の負担が大きく、山の余韻が薄くなる。 ウィンスロップで夕食を取り、翌朝に乾いた谷の光を見る。 その時間が、ノース・カスケードをロードトリップとして完成させる。
東の道――レブンワース、ワラワラ、スポケーンへ。
ワシントン州のロードトリップは、西側だけで終わらせない方がよい。 カスケード山脈を越えた東側には、別の州のような光がある。 レブンワースの山の中のバイエルン風の町。 ヤキマの農業とワイン。 ワラワラの中心街と葡萄畑。 スポケーンの川と滝。 東側へ進むと、雨の州という印象は大きく変わる。
レブンワースは、シアトルから東へ向かう旅の分かりやすい一泊地である。 冬は灯りと雪、夏は川と山。 中心街に泊まれば、車を置いて歩ける。 さらに東へ進めば、ワインカントリーやスポケーンへ旅を伸ばすことができる。
ワラワラは、飲む町ではなく泊まる町である。 中心街に宿を取り、試飲、夕食、朝の散歩を組み合わせる。 車で移動するワイン旅では、飲酒と運転を絶対に軽く見ない。 徒歩圏に泊まる、送迎やツアーを使う、運転者を決める。 これがワインカントリーの基本である。
スポケーンまで行くなら、東部ワシントンをしっかり見る旅として計画したい。 シアトルからの日帰りではない。 リバーフロント公園、滝、ダベンポート・ホテル、博物館、マニト公園。 スポケーンは、内陸ワシントンを理解するための都市である。
実際に使える場所
以下は、ワシントン州ロードトリップの計画に役立つ実在施設である。 道路状況、フェリー、宿泊、食事、国立公園の条件、季節営業は変わるため、 出発前に必ず公式情報を確認してほしい。
ワシントン州フェリー
島、半島、海の旅を組むための重要な交通機関。時刻、チケット、車両予約を確認したい。
- 地域
- ピュージェット湾、サンファン諸島、ウィッビー島方面
- 公式
- 公式サイト
パイク・プレイス・マーケット
シアトル発ロードトリップの前に、州の食と港の空気を受け取る入口。
- 住所
- 85 Pike Street, Room 500, Seattle, WA 98101
- 電話
- 206-682-7453
- 公式
- 公式サイト
マウント・レーニア国立公園
シアトルまたはタコマ発の代表的な山岳ロードトリップ。
- 住所
- 55210 238th Avenue East, Ashford, WA 98304
- 電話
- 360-569-2211
- 公式
- 公式サイト
オリンピック国立公園ビジターセンター
半島一周前に、道路、天候、施設、海岸、雨林情報を確認する重要拠点。
- 住所
- 3002 Mount Angeles Road, Port Angeles, WA 98362
- 電話
- 360-565-3130
- 公式
- 公式サイト
サンファン諸島観光局
アナコーテス発フェリー旅、島内移動、宿泊、鯨観察、食事の計画に役立つ。
- 住所
- 640 Mullis Street, Suite 211, Friday Harbor, WA 98250
- 電話
- 360-378-9551
- 公式
- 公式サイト
ディセプション・パス州立公園
ウィッビー島を橋で抜ける旅の象徴的な海峡と州立公園。
- 住所
- 41229 State Route 20, Oak Harbor, WA 98277
- 電話
- 360-675-3767
- 公式
- 公式サイト
ノース・カスケード国立公園
二十号線を越える山岳ロードトリップの核心。道路と季節確認が必須。
- 住所
- 810 State Route 20, Sedro-Woolley, WA 98284
- 電話
- 360-854-7200
- 公式
- 公式サイト
レブンワース観光案内所
山の中のバイエルン風の町。冬の灯り、夏の川、宿泊と食事の確認に便利。
- 住所
- 645 Front Street, Leavenworth, WA 98826
- 電話
- 509-548-5807
- 公式
- 公式サイト
ワラワラ観光案内
東側ワインカントリーの滞在型ロードトリップに使いやすい拠点。
- 住所
- 26 East Main Street, Walla Walla, WA 99362
- 電話
- 509-525-8799
- 公式
- 公式サイト
リバーフロント公園
スポケーンの中心にある川と滝の公園。東部ワシントン旅の象徴的な場所。
- 住所
- 507 North Howard Street, Spokane, WA 99201
- 電話
- 509-625-6609
- 公式
- 公式サイト
初めての三泊四日。
初めてワシントン州を車で旅するなら、三泊四日でも欲張りすぎない方がよい。 一日目はシアトル。 市場と港を歩き、車はまだ借りなくてもよい。 二日目に車を借り、レーニア山またはウィッビー島へ向かう。 三日目はシアトルへ戻るか、タコマまたはレブンワースへ一泊する。 四日目に余裕を持って空港または次の目的地へ向かう。
三泊四日でオリンピック半島まで入れるなら、シアトル一泊、ポートエンジェルス一泊、フォークスまたはカラロック一泊が現実的である。 ただし、半島を急いで回る旅になる。 ゆっくり見るなら、半島だけで三泊を使いたい。
サンファン諸島を入れるなら、シアトル一泊、フライデー・ハーバー一泊、シアトルまたはアナコーテス周辺一泊という組み方が使いやすい。 フェリーの予約と帰路を先に決める。 島を増やさず、サンファン島に集中する。 初めての島旅は、それで十分に深い。
一週間で組むなら、水と山を分ける。
一週間あるなら、ワシントン州のロードトリップはかなり美しくなる。 まずシアトル二泊。 その後、オリンピック半島二泊。 さらにレーニア山一泊。 最後にタコマまたはウィッビー島、あるいはウッディンヴィルで一泊。 これで、水、雨林、山、都市、食が一通り入る。
山を重視するなら、シアトル一泊、レーニア山一泊、ノース・カスケード二泊、レブンワース一泊、シアトルへ戻る流れもよい。 ただし、二十号線の開通時期と天候が前提になる。 冬や春先には成立しない場合がある。
東側を重視するなら、シアトル二泊、レブンワース一泊、ワラワラ二泊、スポケーン一泊という流れも面白い。 雨のシアトルから、山の町、乾いた葡萄畑、内陸の川の都市へ。 ワシントン州が一つの色ではないことを体で理解できる。
季節を読む。
ワシントン州のロードトリップは、季節でまったく変わる。 夏は最も動きやすい。 山岳道路、国立公園、フェリー、島、ワインカントリーを組みやすい。 ただし混雑、宿泊料金、フェリー予約、駐車に注意する。
春と秋は、低地の町、島、ワインカントリー、シアトル、タコマ、ウィッビー島に向く。 山岳地帯は雪や閉鎖が残る場合がある。 冬は、都市、宿、食事、低地の旅を中心にする。 レブンワースの冬は魅力的だが、道路と雪の準備が必要である。
山を含む旅では、前日と当日の公式確認が欠かせない。 フェリーを含む旅では、時刻と予約が旅の骨格になる。 半島や海岸を含む旅では、潮汐と天候を読む。 ワインカントリーを含む旅では、飲酒と運転を計画する。 季節を読むとは、風景だけでなく制約を読むことである。
日本人旅行者への実用メモ。
日本から来る旅行者は、右側通行、広い道路、長距離運転、給油、駐車、山岳道路、フェリー乗船に慣れる必要がある。 初日に長距離を走らない。 一日の移動距離を短めにする。 日没前に宿へ入る。 これだけで旅はずっと楽になる。
車内には、水、軽食、上着、雨具、充電器、保存済み地図、宿泊情報、フェリー予約情報を入れておきたい。 山や半島では通信が弱くなることがある。 都市ではすぐ検索できることも、自然地域ではできない場合がある。
駐車は、都市と自然で意味が違う。 シアトル中心部では高く、混みやすい。 国立公園では早い時間に埋まることがある。 フェリーでは到着時間が重要になる。 レストランやホテルでは駐車条件を確認する。 駐車を軽く見ると、旅の時間が削られる。
そして、食事を先に考える。 アメリカのロードトリップでは、食事の場所を決めずに走り続けると、疲れた時間に選択肢が悪くなる。 昼は軽くてもよい。 夕食は宿の近くで取る。 山や半島の日は、暗くなる前に食事圏へ戻る。 この考え方が、旅を美しく終わらせる。
結び――水を渡り、山を越える。
ワシントン州のロードトリップを思い出すとき、残るのは目的地だけではない。 シアトルの朝の市場。 フェリーの甲板。 レーニア山へ向かう森の道。 オリンピック半島の雨。 ディセプション・パスの橋。 ディアブロ湖の青。 レブンワースの灯り。 ワラワラの夕方。 スポケーンの川の音。 それらをつなぐ道そのものが、旅の記憶になる。
ワシントン州は、一つの旅程で全部を回収する場所ではない。 水の旅、山の旅、島の旅、半島の旅、東側の旅。 それぞれに違う速度がある。 その速度に合わせるほど、州の深さが見えてくる。
車は、ワシントン州を自由にしてくれる。 しかし自由とは、好きなだけ詰め込むことではない。 どこで止まり、どこで泊まり、どこをあきらめ、どの朝を大切にするかを選ぶことである。 水を渡り、山を越える。 その繰り返しの中で、ワシントン州のロードトリップは、ただの移動ではなく、地形を読む旅になる。